東工大建築学専攻塚本研の活動をレポートしていきます。

2015年11月27日金曜日

「ここに棲むー地域社会へのまなざし」展

こんにちは。修士1年の浦山咲也子です。
現在、群馬県前橋市のアーツ前橋にて、展覧会「ここに棲むー地域社会へのまなざし」が開催中です。
東京工業大学塚本研究室は、アトリエ・ワン+福祉楽団の展示『栗源における里山を資源化するためのアクターネットワークのリデザイン』に、展示協力という形で参加しています。
今回はその報告をします。





 展示は、千葉県香取市に計画中の薪炭供給施設「栗源第一薪炭供給所(通称1K)」に関する取り組みについて紹介するものです。
栗源地域の山々では、もともと杉・ヒノキを中心とした林業が盛んでしたが、現在手入れをする人が減ってしまい、山が荒れたまま放置されているという問題があります。こうした山でも、間伐をすれば、その材を燃料源として地域に供給することができます。また、継続的に間伐を続けていけば、将来的には建築材となる良質な木材を得ることができるようになる可能性を秘めています。

1Kは、こうした栗源の林を維持管理し資源化することで、職を得られず社会的弱者にされてしまいがちな高齢者・障がい者に働く場を供給するというプロジェクトの、拠点となる施設です。
1Kでは、栗源の里山の間伐材を薪に加工し、燃料として地域に供給します。
こうした薪割りなどの作業には危険が伴いますが、安全に行えるようにするため、空間とプロトコルのデザインを行っています。

その例としてあげられるのが、作業マニュアルの作成です。
一つの作業を細かく分解し、準備の仕方から片付けの方法まで、写真とわかりやすい言葉で書いた説明書を作成し、一つ一つ学んでいけるようにすることで、今まで参加するのが難しいと思われていた人も、作業に参加することができます。特に薪割りの作業に関しては、簡単なレバー操作で誰でも薪を割ることのできる薪割機を導入することで、より多くの人が薪割りの作業をすることができるようになります。このマニュアルを作成する取り組みは、すでに福祉楽団の、健常者と障がい者がともに働き香取市の豚を加工・販売する「恋する豚研究所」において実践されています。

展示準備にあたって、まず、薪割り機を使った薪割り作業を体験しました。
体験させていただいた恋する豚研究所は香取市にあり、研究所内の薪ストーブの薪は裏手の林の間伐材でまかなわれています。
まず最初に、斧による薪割りを体験しました。

次に、エンジン式薪割機による薪割りを体験しました。

薪割機を使うと、斧よりも遥かに楽に薪割りをすることができます。

また、将来的に里山の木材を加工するとしたら、地域の製材所にある機械でどんなことができるのかを調査するため、栗源地域にある製材所や工務店を訪問し、聞き取り・実測調査をしました。

この調査は「栗源製材力調査」としてまとめ、展示しています。


次に、福祉楽団の飯田さんと山根さんに、現在恋する豚研究所で使われている掃除と精肉作業に関する作業マニュアルの内容についてお話をうかがいました。その上で、1Kで木の間伐から薪の作成までの作業についてマニュアルを作成するとしたらどのようなものになるかについて、ミーティングをしました。

その際、まず間伐した材が薪になるまでの各工程を、それぞれ細かく分解した図を作成しました。

これをまとめた図を「栗源里山資源化作業分解」として壁面にドローイングしました。


作成したマニュアルは、「栗源第一薪炭供給所(1K)作業マニュアル」として展示しています。
さらに、こうした栗源地域の里山を資源化するまでのもの・人のながれや、1Kの運営の仕組みについて、アクターネットワーク図を作成しました(「栗源の里山を資源化するためのアクターネットワーク」)。

また、今回の展示に際し、写真家の石渡朋さんに恋する豚研究所、多古新町ハウスの写真を撮っていただきました。
実際に恋する豚研究所で間伐した丸太と薪も展示しています。





会期は来年1月12日までです。他では再現出来ない展示となっておりますので、ぜひ見にいらしていただければと思います。
どうぞよろしくお願い致します。


以上、「ここに棲む」展の報告でした。